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第21話 ――ヴェルギア、下がれ

Penulis: みだん
last update Tanggal publikasi: 2026-09-01 16:00:38

時間が、止まった気がした。

短刀は、届かなかった。

私は下がっていた。

名を呼ばれた通りに、考える前に、身体が従っていた。

刃が空を切り、アルヴィス様の影の魔力がそれを絡め取って、地に落とした。

男が拘束される音がした。

ガイル様の声が何か言っていた。

けれど、私の耳には、もう何も入ってこなかった。

私は、彼を見ていた。

アルヴィス様は、剣を下げたまま、こちらを見ていた。

彼の顔から、色が引いていた。

完璧な皇太子の仮面が、初めて、完全に剥がれていた。

「――ヴィオレット」

彼が、私の名を呼び直した。

けれど、遅かった。

もう遅い。

「今」

自分の声が、遠くから聞こえた。

「今、なんて」

「ヴィオレット、これは」

「なんと、仰いました」

彼は答えなかった。

答えられなかったのだと思う。

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